ストックオプションの税金はいつかかる?

株式報酬・個人の税務

ストックオプションの税金はいつかかる?行使・売却・確定申告の整理

ストックオプションを持つ役員・従業員向け 2026年10月初旬時点
ストックオプションは、株式を売って現金を受け取ったときだけ税金がかかるのでしょうか。

ストックオプションの税金は、権利を行使して株式を取得したときと、その株式を売却したときを分けて考えます。種類によっては、まだ株式を売っていなくても、行使時点で給与として課税されます。

自分のストックオプションが税制適格か非適格か、非適格ならどのように取得したものかを先に確認することが重要です。本記事では、課税時期、利益の計算、納税資金と申告資料を整理します。

先に結論

「税制適格なら株式売却時まで課税を繰り延べる」「無償の税制非適格なら原則として行使時にも課税される」という違いがあります。ただし、本人が適正な時価で購入した有償型などは別に扱います。

本記事は、日本の居住者である役員・従業員が保有するストックオプションの一般的な課税関係を中心に説明します。

1.付与・行使・売却の3つの段階

ストックオプションは、あらかじめ決められた価格で会社の株式を取得できる権利です。権利を持つことと、株式そのものを持つことは異なります。

  1. 付与・取得:ストックオプションという権利を取得する。
  2. 行使:権利行使価額を払い込み、株式を取得する。
  3. 売却:行使して取得した株式を売り、売却代金を受け取る。

一般的な譲渡制限付きの無償型では、付与された時点では課税されません。その後の行使と売却で、どの所得として課税されるかが税制適格・非適格によって変わります。

株式の売却とは別に、権利そのものを譲渡・買い取ってもらう取引は、ここで説明する計算をそのまま当てはめられません。

課税の段階と基本的な所得区分:国税庁 No.1543。

2.種類別に見る課税時期の違い

まず、自分が持つ権利の付与契約書と会社の説明資料を確認します。下表は、代表的な3つのケースについて、行使と株式売却の課税関係を比較したものです。

比較表は横にスクロールできます。

種類・前提行使して株式を取得したとき取得した株式を売ったとき
税制適格
適用要件を満たすもの
行使時の経済的利益への課税を繰り延べる。原則として、売却価格と権利行使価額との差額が株式の譲渡所得となる。
税制非適格
勤務先からの無償・有利発行型
行使時の株価と権利行使価額との差額が、原則として給与収入となる。原則として、売却価格と行使時の株価との差額が株式の譲渡所得となる。
税制非適格
本人が適正な時価で購入した有償型
一般的には、行使時の値上がり益を所得として認識しない。売却代金から、権利の購入代金と権利行使時の払込額等を差し引いて株式の譲渡所得を計算する。

有償型は、本人が適正な時価で権利を購入したことが前提です。「有償」という名称や少額の支払いがあることだけで、行使時に課税されないと判断することはできません。

信託を通じて付与されたものも、本人が直接購入した有償型と同じとは限りません。国税庁Q&Aでは、税制非適格の信託型について、一定の仕組みの下で行使時の給与課税を示しています。信託型は契約と仕組みを別途確認します。

比較の根拠:国税庁 No.1540、No.1543、ストックオプションに対する課税Q&A(問1・2・3・6)。

3.税制適格の要件は、契約と実際の行使で確認する

税制適格は、会社がそう呼んでいるだけで適用が確定するものではありません。対象者、付与契約の内容、実際の行使や取得した株式の管理が、法令上の要件を満たす必要があります。

確認する主な項目は、対象者・無償付与の要件、権利行使期間、年間の権利行使価額の限度額、契約締結時の株価と権利行使価額の関係、権利の譲渡禁止、行使後の株式の保管・管理です。

行使期間や年間限度額には、会社の設立からの年数等に応じた取扱いがあります。複数回に分けて行使する場合も、今回の行使だけでなく、その年の行使状況を整理します。

以前に締結した契約については、改正の適用関係や経過措置も確認します。現在の制度説明だけを見て、古い契約の条件をそのまま読み替えないことが大切です。

適用要件と契約・株式管理の取扱い:国税庁Q&A(問6・10・11)。株式の管理契約の終了等による課税はNo.1541も参照してください。

4.税制非適格の行使益と売却益

無償・有利発行型の行使益は、原則として給与収入

勤務先から職務の対価として付与された税制非適格の無償・有利発行型では、行使時の株価から権利行使価額を差し引いた利益が、原則として給与収入になります。

行使時の給与収入に算入する額
=(行使時の1株当たり株価 − 1株当たり権利行使価額)× 株数

この金額は、給与所得控除を差し引いた後の「給与所得の金額」そのものではありません。通常の給与などと合わせて給与収入を計算し、所得税・住民税への影響を確認します。

業務委託の対価や、退職後の行使などは、付与の理由と事実関係によって所得区分の検討が必要です。退職したという理由だけで、給与課税がなくなると考えないようにします。

行使益の計算と所得区分:国税庁 No.1543。

売却時は、行使時の株価を基に譲渡益を計算する

この無償・有利発行型で取得した株式を売る場合、原則として、行使時の株価が売却時の取得費の基礎になります。行使時に給与として扱った部分を、売却時にも同じように譲渡益として数えるわけではありません。

売却益の計算に権利行使価額だけを使うと、行使益と売却益を取り違えることになります。行使時の株価と、その算定根拠を保管しておく必要があります。非上場会社では、行使時点の株価の確認自体が重要な作業です。

売却益と取得費:国税庁 No.1543、No.1464。行使時の非上場株価は国税庁Q&A(問5)を参照してください。

5.同じ株価でも課税の内訳が変わる計算例

権利行使価額を1株200円、行使時の株価を1株1,200円、売却価格を1株1,800円とし、1,000株を行使してすべて売却する架空の例です。手数料や他の株式取引等は考慮しません。

比較表は横にスクロールできます。

項目税制適格税制非適格
無償・有利発行型
行使時の払込み200円 × 1,000株 = 20万円200円 × 1,000株 = 20万円
行使時の課税経済的利益への課税を繰り延べる。(1,200円 − 200円)× 1,000株 = 給与収入100万円
株式の売却代金1,800円 × 1,000株 = 180万円1,800円 × 1,000株 = 180万円
売却時の譲渡所得(1,800円 − 200円)× 1,000株 = 160万円(1,800円 − 1,200円)× 1,000株 = 60万円

経済的な利益はどちらも160万円ですが、税制適格では株式の譲渡所得160万円、無償の税制非適格では給与収入100万円と株式の譲渡所得60万円に分かれます。

2026年中の売却について、税制適格の譲渡所得160万円に20.315%を単純に掛けると、税額の概算は325,040円です。無償の税制非適格では、給与部分に同じ税率を掛けるのではなく、他の給与収入や控除等を含めて税額を試算します。

課税内訳は国税庁 No.1540とNo.1543、譲渡所得の税率はNo.1463に基づきます。例示金額は制度上の基準額ではなく、税額は端数処理等を省いた概算です。

6.売却前の納税資金と、値下がりへの注意

無償の税制非適格では、行使によって株式を取得した時点で給与課税が生じるため、売却代金がまだ入っていなくても税金の負担が発生します。権利行使の払込資金に加え、源泉徴収やその後の納税に必要な資金を確認します。

国内の勤務先が付与した無償・有利発行型などでは、発行会社による行使時の給与に係る源泉徴収も確認事項です。行使する本人だけでなく、会社の給与・経理担当者とのすり合わせが必要になります。

行使後の値下がりで、給与課税が自動的に消えるわけではない

行使時より低い価格で株式を売ると、株式の譲渡損失が生じることがあります。ただし、株式の譲渡損失を給与所得から差し引くことは原則としてできません。行使時の税負担と、売却時の損益を別々に確認します。

売却制限や譲渡承認の条件がある場合、希望する時期に売却できるかも確認します。特に非上場株式では、計算上の株価が高いことと、すぐに売って現金を受け取れることは別です。

源泉徴収:国税庁Q&A(問1・4)。譲渡損失:No.1465。

7.確定申告と、そろえておきたい資料

行使益が給与として源泉徴収されていても、株式を売却した年の申告まで自動的に完了するとは限りません。給与収入、他の所得、源泉徴収や年末調整の状況を踏まえ、確定申告の必要性を判定します。

税制適格ストックオプションで取得した株式は、特定口座制度やNISAを利用できません。「証券会社で売ったから申告は不要」と判断せず、譲渡所得の計算と申告要否を確認してください。

税制適格の株式売却について申告する場合は、「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書(特定権利行使株式分及び特定投資株式分がある場合)」など、対象年の申告様式を確認します。

  • 付与契約書・新株予約権の内容と、税制適格・非適格の説明資料
  • 行使日、行使した株数、1株当たり権利行使価額、払込記録
  • 行使時の株価と、その算定資料(税制非適格の場合)
  • 売却日、売却株数、売却代金、手数料の明細
  • 源泉徴収票と、行使益に係る源泉徴収・給与への反映が分かる資料
  • 株式の保管・管理の契約と、複数回の行使・売却の履歴

海外の会社から付与されたもの、信託型、退職後の行使などは、その事情も伝えてください。会社の説明資料だけでは課税関係を確定できない場合は、契約内容や実際の取引から確認します。

特定口座・NISAと申告様式:国税庁 No.1540。給与所得者の申告要件:No.1900。

8.まとめ

ストックオプションの税金は、行使と売却の時期、税制適格の要件、権利を取得した方法によって変わります。まず種類を確認し、行使益と売却益を分けて計算してください。

行使する前に必要な資金と税負担を試算し、行使時の株価・払込記録・売却明細を残しておくことが、後の申告にも役立ちます。

ストックオプションの税金・確定申告のご相談

榊公認会計士・税理士事務所では、役員・従業員・退職者のストックオプションについて、行使・売却時の税務の確認、税額試算、確定申告に対応しています。

権利の種類が分からない場合も、付与契約書や会社の説明資料をもとに確認します。発行会社側の株価算定・税制適格要件の確認もご相談いただけます。

主な参照資料

2026年10月初旬に確認。国税庁タックスアンサーは令和8年4月1日現在の法令等、Q&Aは令和6年11月改訂版を参照しています。

  1. 国税庁:No.1540 ストック・オプション税制の適用を受けて取得した株式を譲渡した場合
  2. 国税庁:No.1543 税制非適格ストック・オプションに係る課税関係について
  3. 国税庁:ストックオプションに対する課税(Q&A)(令和6年11月改訂)
  4. 国税庁:No.1541 ストック・オプション税制の適用を受けて取得した株式の返還又は移転があった場合
  5. 国税庁:No.1464 譲渡した株式等の取得費
  6. 国税庁:No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)
  7. 国税庁:No.1465 株式等の譲渡損失(赤字)の取扱い
  8. 国税庁:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人

※本記事は2026年10月初旬に確認した公表資料に基づく一般的な解説です。個別の課税関係は、付与契約、権利の取得方法、行使・売却の時期、勤務関係、居住地等によって異なります。実際の行使・売却・申告では、適用年の法令・通達と個別事情を確認してください。

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