2027年のミニマムタックス|会社売却の税率は20.315%で済む?

会社売却・オーナーの税務

2027年のミニマムタックス|会社売却の税率は20.315%で済む?

非上場株式の売却を検討する個人株主向け 2026年10月中旬時点
「会社を売った利益の約2割を税金として残せばよい」。2027年の売却でも、その試算で足りるでしょうか。

譲渡益が高額になる場合、20.315%だけで税額を見積もると不足することがあります。個人の非上場株式売却にも、「ミニマムタックス」による追加の所得税が生じる場合があるためです。

2027年分からは、この制度の特別控除額が3億3,000万円から1億6,500万円へ下がり、比較計算に使う割合が22.5%から30%へ上がります。会社売却や事業承継を検討するオーナーは、従来の税率だけで手取りを見込んでいないか確認が必要です。

本記事では、非上場株式を第三者に売却する個人を念頭に、追加課税の考え方、譲渡益4億円の計算例、年末年始をまたぐ取引の確認点を整理します。

改正のステータスと適用時期

関連する改正法は2026年3月31日に成立しています。特別控除額と割合の見直しは、2027年分以後の所得税から適用されます。2027年に提出する「2026年分」の確定申告から、この数字に変わるわけではありません。

成立の確認:財務省「税制をめぐる最近の動き」/改正内容・適用時期:財務省「令和8年度税制改正」4ページ(PDF)

1.2027年のミニマムタックスで変わること

ミニマムタックスは、一定の高額所得がある個人について、通常の所得税等の負担が所定の水準を下回るときに、差額に相当する所得税を加算する制度です。正式には「特定の基準所得金額の課税の特例」といい、制度自体は2025年分から適用されています。

2027年に新しく始まる制度ではなく、既にある制度の計算条件が変わります。非上場株式の譲渡益も判定に含まれるため、普段の役員報酬だけでは対象にならなくても、株式を売った年に影響する可能性があります。

所得の年分追加課税を判定する計算条件
2025年分・2026年分基準所得金額から3億3,000万円を控除し、22.5%を掛けた金額と、基準所得税額を比較。
2027年分以後基準所得金額から1億6,500万円を控除し、30%を掛けた金額と、基準所得税額を比較。

控除額が小さくなり、掛ける割合も上がるため、これまで追加課税がなかった規模の株式売却でも、税負担が増える場合があります。

制度の基本:国税庁 No.2270「特定の基準所得金額の課税の特例」(2026年分までの計算条件)/2027年分からの見直し:財務省「令和8年度税制改正」4ページ(PDF)

2.1.65億円の判定は、会社の売却代金ではない

判定の出発点は、売却代金ではなく「基準所得金額」です。これは、1年間の株式譲渡益や給与所得などを、この制度のルールに従って合算した金額を指します。

株式については、通常、売却代金から取得費や譲渡に必要な費用を差し引いた譲渡益を計算します。

例えば、売却代金4億5,000万円、株式の取得費4,000万円、譲渡費用として認められる金額1,000万円という仮定なら、譲渡益は次のとおりです。

4億5,000万円 − 4,000万円 − 1,000万円 = 4億円

売却代金と譲渡益を混同すると、対象判定も手取りの計算もずれます。M&Aの提案資料に記載された「会社全体の株式価値」と、売主本人が保有する株式の売却代金も分けて確認します。

株式以外の所得も、その人の1年分で見る

基準所得金額には、一般株式等・上場株式等の譲渡所得等に加え、給与所得、事業所得、不動産所得、退職所得なども含まれます。役員報酬は給与収入そのものではなく給与所得、退職金も受取額そのものではなく退職所得金額を確認します。

また、基準所得金額は、社会保険料控除などの「所得控除」を差し引く前の金額で判定します。売却代金、経費等を差し引いた所得、所得控除後の課税所得を区別しておくと、計算を追いやすくなります。

源泉徴収ありの特定口座で申告不要としていた株式譲渡益や、申告不要の対象となる配当等も、この判定では含めて計算します。本特例で追加の所得税が課される場合は、これらの所得にも申告不要制度を使えず、申告に含める必要があります。

一方、NISAで非課税となる所得や、預貯金の利子など源泉分離課税の対象となる所得は含みません。

1.65億円を超えたら、必ず追加課税されるわけではありません。基準所得金額から1.65億円を控除し、30%を掛けた金額が、通常の方法で計算する基準所得税額を上回る場合に追加課税されます。

株式譲渡益だけで、他の所得や所得控除等がない単純なケースでは、おおむね3.4億円程度から追加負担が生じる計算です。すべての人に共通する金額ではありません。

譲渡益の計算:国税庁 No.1463「株式等を譲渡したときの課税」/対象所得:No.2270/3.4億円程度という水準:財務省資料4ページの見直しイメージ(PDF)

3.20.315%と30%を、そのまま比べない

2026年の通常の株式譲渡益の税率は、所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%を合わせた20.315%です。

2027年は、復興特別所得税が所得税額の1.1%となり、防衛特別所得税が所得税額の1%加わります。いずれも、譲渡益ではなく所得税額に掛ける税率です。両者を合わせると所得税額の2.1%となるため、ミニマムタックス等を考慮しない通常の合計税率は、引き続き20.315%です。

一方、見直し後の30%は、基準所得金額から1億6,500万円を控除した金額に掛ける割合です。住民税を含む20.315%とは、比較する範囲も計算の土台も異なります。

A:比較用の金額 =(基準所得金額 − 1億6,500万円)× 30%

B:追加課税がないものとして計算した所得税等(基準所得税額)

AがBを上回る場合、A − Bを所得税に加算

Bには、通常の所得税に対応する防衛特別所得税・復興特別所得税も含めます。住民税は含めません。外国税額控除等がある場合には、別途調整が必要です。

さらに、追加の所得税が生じる場合は、加算後の所得税額に対応する付加税も計算します。「通常の20.315%に、そのまま30%を足す」計算でも、「利益全体に一律30%を掛ける」計算でもありません。

通常の税率:国税庁 No.1463/2027年の付加税:財務省資料12ページ(PDF)/基準所得税額の構成:国税庁 No.2270、防衛特別所得税に係る読替規定の新旧対照表・第五条の三十一(PDF)

4.譲渡益4億円なら、税額・手取りはどう変わるか

ここでは、先ほどの売却代金4億5,000万円、取得費4,000万円、譲渡費用1,000万円、譲渡益4億円の例を使います。国内居住の個人が第三者に株式を売却し、他の所得、所得控除、税額控除、ミニマムタックス以外の特例はないものとします。

この前提では、2027年分の税負担は2026年分より約943万円増え、その分だけ手取りが減る試算です。

所得の年分税額と今回の売却で残る手取り
2026年分税額:8,126万円
手取り:3億5,874万円
2027年分税額:約9,069万円
手取り:約3億4,931万円

手取りは「売却代金4億5,000万円 − 今回支払う譲渡費用1,000万円 − 税額」で計算しています。過去に支払った取得費4,000万円は、今回の手取りから再度差し引きません。

税額は所得税・付加税・住民税の合計。比較表は万円単位で表示し、以下の内訳は申告・納付時の端数処理前の計算値です。

2026年分では、この例の追加課税はない

通常の所得税は4億円×15%=6,000万円、復興特別所得税は126万円です。基準所得税額は6,126万円となります。

特例による比較用の金額は(4億円−3億3,000万円)×22.5%=1,575万円で、基準所得税額を下回ります。追加の所得税は生じず、住民税2,000万円を含めた税負担は8,126万円です。

2027年分では、追加の所得税が924万円

付加税の構成は変わりますが、特例適用前の所得税と付加税の合計は6,126万円です。比較用の金額は(4億円−1億6,500万円)×30%=7,050万円に増えます。

追加の所得税:7,050万円 − 6,126万円 = 924万円

加算後の所得税は6,924万円となり、これを基に付加税を計算します。

項目試算額(端数処理前)
所得税6,000万円 + 924万円 = 6,924万円
復興特別所得税6,924万円 × 1.1% = 76万1,640円
防衛特別所得税6,924万円 × 1% = 69万2,400円
住民税4億円 × 5% = 2,000万円
合計9,069万4,040円

この例の税負担率は、売却代金ではなく譲渡益4億円に対して約22.67%です。端数処理前の税額差は943万4,040円で、この節の説明では約943万円と示しています。追加の所得税924万円だけで比較すると、それに伴う付加税の増加分を見落とします。

実際には、役員報酬や配当、不動産売却益、退職所得などがあると、基準所得金額と基準所得税額の両方が変わります。この例の税負担率を、別のオーナーや売却金額にそのまま当てはめることはできません。

計算の基礎:国税庁 No.2270、特例の適用がある場合の記載例(2025年分・PDF)/改正後の控除額・割合・付加税:財務省「令和8年度税制改正」4・12ページ(PDF)。上記の金額は、これらを基に本記事の仮定で計算したものです。

5.2026年と2027年のどちらの所得になるか

年末年始をまたぐM&Aでは、税務上どの年に株式譲渡の収入を計上するかが重要です。個人の通常の株式売却は、原則として株式の引渡しがあった日によります。ただし、納税者の選択により、譲渡契約の効力発生日で申告する取扱いも認められています。

契約書に署名した日、契約の効力発生日、株式の引渡日、代金の入金日は、必ずしも一致しません。「年内に契約した」「入金を翌年にした」という情報だけで、どの年分になるかを決めないことが必要です。

分割払いにすれば、所得も自動的に分散するわけではありません

代金の受取時期と、税務上の収入計上時期は別の論点です。後払い、対価の一部留保、業績連動の追加対価などがある場合は、契約内容と権利が確定する時期を個別に確認します。納税時点で手元資金が不足しないかも合わせて検討します。

2026年中の譲渡でも、所得の規模によっては現在のミニマムタックスが適用されます。税負担の差を試算したうえで、価格、買い手の資金調達、引継ぎ、契約上の条件を含めて、実行時期を判断します。

収入計上時期:国税庁 措置法通達37の10・37の11共−1「株式等に係る譲渡所得等の総収入金額の収入すべき時期」

6.売却前にそろえたい資料と確認事項

手取りの確認は、提示された株価に一定の税率を掛けるだけでは終わりません。誰が何株売るのか、取得費はいくらか、同じ年にどのような所得があるか、いつ譲渡するのかをそろえて試算します。

  • 売主ごとの保有株数、売却株数、提示価格とその算定資料
  • 株式の取得・出資・相続等の経緯と、取得費を確認できる資料
  • 仲介手数料等の契約・請求書と、譲渡費用に含める金額
  • 役員報酬、退職金、配当、上場株式や不動産の売却等の見込み
  • 契約の効力発生日、引渡日、代金支払日、追加対価の条件
  • 既に作成した税額・手取りの試算と、納税資金の見込み

ミニマムタックスの判定は、売主である個人ごとに行います。会社全体の売却価格が高額でも、株主構成や各人の取得費・他の所得によって、影響は異なります。

また、発行会社に株式を買い取ってもらう取引では、みなし配当など別の課税関係も確認します。法人株主の売却や、会社が事業・資産を売る事業譲渡も、本記事の株式譲渡の試算とは分けて検討します。

2027年の売却を検討している場合は、これまでの「20.315%」だけで作った試算を更新し、契約前に税額と手取りの前提を確認しておくと、価格交渉や実行時期の判断に使えます。

会社売却の税額と、手取りの前提を確認する

非上場株式の売却について、提示価格の根拠、取得費、売却先、他の所得や取引時期を確認し、税引き後の手取りも含めた検討を支援します。

提案書、株式の取得資料、契約案、既存の税額試算がある場合は、相談時にお知らせください。

主な参考資料

2026年10月中旬時点の一次資料を確認しています。2026年分までの制度説明と、2027年分からの改正内容を区別して参照しています。

  1. 財務省:税制をめぐる最近の動き(令和8年1月〜、改正法の成立)
  2. 財務省:令和8年度税制改正(4ページ・高額所得に対する負担の見直し、12ページ・防衛特別所得税、PDF)
  3. 国税庁 No.2270:特定の基準所得金額の課税の特例(制度の基本と2026年分までの計算条件)
  4. 国税庁 No.1463:株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)
  5. 財務省:所得税法等の一部を改正する法律案・新旧対照表(防衛特別所得税に係る読替規定、PDF)
  6. 国税庁:特定の基準所得金額の課税の特例の適用がある場合の記載例(2025年分、PDF)
  7. 国税庁:措置法通達37の10・37の11共−1(株式譲渡の収入計上時期)

本記事は、個人が非上場株式を第三者に売却する場合を中心とした一般的な解説です。計算例は仮定に基づき、実際の納税額を示すものではありません。所得構成、取得費、各種控除・特例、居住状況、契約内容等によって取扱いは異なります。実行前に、取引の年分に適用される法令等と個別の事実関係を確認してください。

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