食料品にかかる消費税率を、現在の8%から1%へ2年間引き下げる改正案が公表されました。政府が2026年9月15日に大綱を閣議決定し、国税庁も制度案の特設サイトやQ&Aを公開しています。
ただし、2026年9月末時点では、まだ法律として成立していません。今後、法案が国会へ提出され、可決・成立した場合に実施される内容です。「食料品の消費税が1%に決まった」と断定できる段階ではないことに注意が必要です。
本記事では、飲食店の店内飲食ではなく、法人が売買する食料品の税率改正にテーマを絞り、対象品目、開始時期、請求書・会計処理、必要になり得る届出をわかりやすく整理します。
まず結論:法人が押さえておきたい3つのポイント
今回の改正案の要点は、次の3つです。
現在8%の対象となっている飲食料品を、2027年4月1日から2029年3月31日まで1%にする案である
対象取引に1%を適用するための一律の「申請」はない
飲食料品を販売する免税事業者や簡易課税事業者は、還付の可能性を踏まえて課税方式と届出を検討する余地がある
飲食料品を販売していない一般法人でも、会議用の飲料、従業員向けの食品、贈答品などを購入する場面では、仕入れの税率区分が変わります。一方、税率変更だけを理由に、すべての法人が税務署へ届出を出す必要はありません。
何が1%になるのか
改正案で1%になるのは、原則として、現在の軽減税率8%の対象となっている飲食料品と同じ範囲です。法律上は、食品表示法に規定する食品のうち、酒類を除いたものが中心となります。
| 取引・品目 | 改正案の税率 | 補足 |
|---|---|---|
| 飲食料品の販売 | 1% | 現在8%の対象となっている範囲 |
| 酒類 | 10% | 1%の対象外 |
| 店内飲食・通常のケータリング | 10% | 食品そのものの販売ではなく、役務の提供に当たるため |
| 定期購読契約による一定の新聞 | 8% | 今回の1%への引下げ対象外 |
| 食品以外の商品・一般のサービス | 10% | 標準税率は変わらない |
食品と食品以外の商品が一体となった「一体資産」は、税抜価額が1万円以下で、食品部分の価額が全体の3分の2以上であるなど、現行と同じ要件を満たせば全体が1%の対象となる案です。
つまり、消費税の標準税率10%を下げる改正ではありません。食料品だけを対象に、現在の軽減税率8%を一時的に1%へ引き下げる案です。
いつから、いつまで1%になるのか
大綱で示された期間は、次の2年間です。
- 開始:2027年4月1日
- 終了:2029年3月31日
1%は国税と地方消費税を合わせた税率で、内訳は消費税0.78%、地方消費税0.22%です。
原則として、この期間に行われる飲食料品の販売や輸入に1%が適用されます。契約日や入金日だけで決まるのではなく、原則は実際に商品の引渡しが行われた時点で判定します。
ただし、開始日前後には例外があります。次の取引は、2027年4月1日以後の販売でも8%となる可能性があります。
- 2027年1月1日より前に締結した一定の定期供給契約に基づき、同年4月1日より前に代金を受け取った部分
- 2027年1月1日より前に販売条件を提示した一定の通信販売で、同年4月1日より前に申込みを受けたもの
いずれも、最初から1%を前提にした契約や、その前提へ変更した契約などは除かれます。また、8%で販売した商品の返品や貸倒れが2027年4月1日以後に発生した場合は、元の取引と同じ8%で調整します。
定期便、カタログ販売、EC販売などを行う会社は、2027年1月1日と4月1日の双方を基準日にして、契約日、条件提示日、申込日、入金日、出荷日を確認できるようにしておく必要があります。
税率が下がれば、会社の利益は増えるのか
税率が8%から1%になっても、販売会社の利益が自動的に増えるわけではありません。
たとえば、税抜価格1万円の商品について税抜価格を変えなければ、税込価格は1万800円から1万100円へ下がります。販売会社の税抜売上はどちらも1万円で、預かる消費税だけが800円から100円へ減ります。
買手が仕入税額控除を全額受けられる課税事業者の場合も、支払額は700円減りますが、控除できる消費税も700円減ります。そのため、税抜きの費用そのものは原則として1万円のままです。
一方、食品の販売には1%、設備、包装資材、物流サービスなどの仕入れには10%が適用される取引もあります。一般課税では「売上げで預かった消費税」から「仕入れ等で支払った消費税」を差し引くため、設備投資などの状況によっては納税額が減ったり、還付が生じたりする可能性があります。
ただし、還付額は売上構成、課税仕入れの内容、インボイスの保存状況、課税方式などで変わります。「食品を売っていれば必ず還付になる」という意味ではありません。
請求書と会計処理はどう変わるのか
飲食料品を販売するインボイス発行事業者は、対象商品の適用税率を1%とし、1%で計算した消費税額をインボイスに記載することになります。
一方、インボイスや帳簿の必須記載事項そのものを全面的に変える案ではありません。現在使っている「軽減税率対象」といった表示を、すべて「1%対象」へ書き換える必要もないと国税庁は説明しています。
実務では、次の対応が必要になります。
- 商品マスターに1%の税率区分を追加する
- 1%、8%、10%を区分して請求書を作成・受領できるようにする
- 税率変更日前後の返品、値引き、割戻しを元取引の税率で処理する
- 8%と1%が混在する締め請求書を正しく集計する
- 経過措置により8%となる取引を通常の1%取引と区別する
飲食料品を購入するだけの法人も、受領したインボイスに記載された税率と税額に基づいて仕入税額控除を計算します。自社の判断で一律に1%へ置き換えるのではなく、まず売手の請求内容を確認することが基本です。
税率1%の適用に申請は必要か
対象となる飲食料品を1%で販売・購入するための一律の申請はありません。法案が成立すれば、対象期間中の対象取引に法律上の税率が適用されます。
届出を検討する可能性があるのは、主に「飲食料品を販売する会社」が課税方式を変えたい場合です。改正案では、次の特例が示されています。
| 会社の状況 | 税率変更だけを理由とする届出 | 検討対象となる手続 |
|---|---|---|
| 飲食料品を購入するだけの一般法人 | 原則不要 | 会計・請求書処理の変更 |
| 一般課税で申告している飲食料品販売会社 | 原則不要 | 還付見込みと資金繰りの試算 |
| 免税事業者である飲食料品販売会社 | 任意 | 消費税課税事業者選択届出書、またはインボイス発行事業者の登録申請 |
| 簡易課税を適用する飲食料品販売会社 | 任意 | 消費税簡易課税制度選択不適用届出書 |
免税事業者が課税事業者を選ぶ場合
通常、免税事業者が課税事業者を選択するには、原則として課税期間が始まる前までに「消費税課税事業者選択届出書」を提出します。
今回の改正案では、飲食料品を販売する免税事業者が、2027年4月1日の属する課税期間中に同届出書を提出すれば、その課税期間の初日から課税事業者になれる特例が設けられる予定です。届出書の参考事項欄には「飲食料品特例」と記載します。
ここで注意したいのは、課税事業者になるのが2027年4月1日からとは限らないことです。法人の課税期間は原則として事業年度なので、特例を使うと、その事業年度の初日まで遡って課税事業者になります。4月1日より前の売上げも含めて申告が必要になる場合があります。
また、課税事業者を選択すると、原則として2年間は課税事業者を続ける必要があります。高額な資産を取得した場合などには、さらに免税へ戻れる時期が制限されることもあります。還付見込みだけでなく、対象期間終了後まで試算したうえで判断すべきです。
免税事業者が2027年4月1日からインボイス発行事業者になる方法もあります。現行の経過措置を利用する場合、希望日の15日前までに登録申請が必要で、4月1日登録なら2027年3月17日が提出期限の目安です。この方法では登録日から課税事業者となりますが、インボイスの交付・保存義務や課税継続期間にも注意が必要です。
簡易課税から一般課税へ変える場合
改正案では、飲食料品を販売する簡易課税事業者が、2027年4月1日の属する課税期間中に「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出すれば、その課税期間から一般課税へ変更できる特例も設けられる予定です。
この場合も、変更の効果は原則として事業年度の初日からです。1%の取引が始まる4月1日だけを見て判断せず、事業年度全体で簡易課税と一般課税のどちらが有利かを比較する必要があります。
この特例を使う場合は、届出書の参考事項欄に「飲食料品特例」と記載します。また、通常は簡易課税を2年間継続しなければ適用をやめられませんが、飲食料品を販売する事業者の2027年4月1日の属する課税期間については、この2年間の継続適用要件が外される予定です。
なお、簡易課税を続ける場合、改正案では、1%対象の飲食料品売上げについて業種区分にかかわらず売上税額と同額の仕入税額を計上する特例が予定されています。飲食料品以外の売上げは、通常のみなし仕入率で計算します。
中間申告を行う法人の特例
前期実績を基準に中間納付額を計算すると、税率引下げ後の実態に比べて納付額が大きくなる可能性があります。そこで改正案では、2027年4月1日以後に開始する中間申告対象期間について、直前の課税期間の飲食料品に係る売上げ・仕入れに1%が適用されたものとして計算した税額に基づき、仮決算による中間申告書を提出できる特例が予定されています。自動的に中間納付額が減る制度ではなく、利用するかどうかを会社ごとに検討する取扱いです。
消費者向けに販売する会社の価格表示
消費者向けの価格は、原則として税込みの総額表示が必要です。改正案では、表示の切替えがすぐには難しい事業者のため、2027年2月1日から5月31日まで、実際の支払額と誤認させない掲示などを条件に、8%表示と1%表示の混在を認める特例が示されています。
これは表示変更を一切しなくてよい制度ではありません。店頭、カタログ、ECサイト、見積書など媒体ごとに、顧客が実際の支払額を誤解しない案内を準備する必要があります。
一般法人が今から確認しておくこと
現時点では法案成立前なので、システム改修や課税方式の変更を確定事項として進める段階ではありません。ただし、次の確認は先に始められます。
飲食料品を販売する会社
- 自社の商品が現在の軽減税率8%の対象かを整理する
- 2027年1月1日より前の定期供給契約や通信販売条件を洗い出す
- 4月1日前後の出荷、返品、値引きを追跡できるか確認する
- 税抜価格と税込価格のどちらを基準に価格を決めるか検討する
- 一般課税、簡易課税、免税の各ケースで2027年度以後の納税額を試算する
- 課税方式を変える場合の届出期限と、事業年度全体への影響を確認する
飲食料品を購入する一般法人
- 経費精算や会計システムで1%の税率区分を扱えるか確認する
- 受領したインボイスの税率をそのまま正しく取り込めるか確認する
- 返品・値引きが元の8%取引か、新しい1%取引か判別できるようにする
- 購買契約が税込価格か税抜価格かを確認する
まとめ
政府の大綱では、現在8%の対象となっている飲食料品の消費税率を、2027年4月1日から2029年3月31日まで1%へ引き下げる案が示されています。ただし、2026年9月末時点では法案成立前です。
一般法人に一律の申請が必要になるわけではありません。食料品を購入する会社は主に税率区分と請求書処理を、販売する会社はそれに加えて契約、価格、返品、課税方式を確認することになります。特に免税事業者や簡易課税事業者は、一般課税に変えることで還付を受けられる可能性がある一方、課税期間の初日への遡及や継続要件もあるため、会社ごとの試算が欠かせません。
今後は、法案の提出、国会審議、成立日、公布される法令、届出様式の更新を順に確認する必要があります。契約や届出を確定する際は、最新の国税庁資料と税理士への確認をおすすめします。
主な一次資料
※本記事は2026年9月末時点で公表されている大綱および国税庁資料に基づき、一般的な情報を整理したものです。個別の取引における税務判断を代替するものではありません。

