非上場株式の評価方法が大きく変わる?残余利益方式と2026年9月後半の最新動向

2026年9月後半・最新動向

非上場株式の評価はどう変わる?
残余利益方式と2026年最新の見直し議論

情報確認:2026年9月後半 テーマ:相続・贈与における非上場株式評価
「自社株の評価方法が変わると、相続税や贈与税が高くなるのでは?」

国税庁では現在、非上場株式の相続税・贈与税評価について、評価体系そのものを見直す議論が進んでいます。中心となっているのが「残余利益方式」です。

IMPORTANT

2026年9月後半時点で、導入内容や適用開始日が確定したわけではありません。9月16日の第6回有識者会議では具体的な計算案や試算が示されましたが、経済産業省や日本商工会議所からは、企業の成長や事業承継への影響を懸念する意見も出ています。

本記事では、現時点で示されている案と、まだ決まっていないことを整理します。ここでいう「株価」は、主に相続税・贈与税を計算するための評価額を指します。

01

まだ確定ではない

新方式の最終的な算式、適用範囲、開始時期や経過措置は未確定です。

02

残余利益方式が中心

一般の事業会社について、会社規模による区分を見直し、残余利益方式を中心とする案が示されています。

03

全社で上がるわけではない

試算では会社規模によって増減方向が異なり、個社への影響は利益・純資産等で変わります。

1.国税庁は何を変えようとしているのか

現在は、会社の規模や株主の立場で評価方法が変わる

現行制度では、一般の会社の株式を同族株主等が取得する場合、会社の規模に応じて、原則として次の方法を使います。

会社の区分 原則となる評価方法 大まかな考え方
大会社 類似業種比準方式 類似する上場会社の株価を参考に、配当・利益・純資産を比較する
中会社 併用方式 類似業種比準方式と純資産価額方式を組み合わせる
小会社 純資産価額方式 資産・負債を原則として相続税評価に置き換え、一定の調整をする

実際には他の方式を選べる場合があり、一定の少数株主等には配当還元方式、特定の評価会社には別の取扱いがあります。また、「大会社」は税務上の評価区分であり、一般にいう大企業と同じ意味ではありません。

見直しの背景には、会社規模による評価水準の差や、評価額を意図的に圧縮する仕組みへの問題意識があります。

見直し案は、残余利益方式を中心とする評価体系

国税庁の第5回会議の骨子では、会社規模によって評価方法を分ける仕組みを廃止し、一般の事業会社は原則として残余利益方式で評価する方向が示されました。

一方、純資産価額方式と配当還元方式をすべてなくす案ではありません。特定の会社や株主に用いる方式として、適用対象や計算方法を見直す構想です。

現在の案は「すべての非上場株式を同じ式で評価する」という単純なものではありません。

2.残余利益方式とは

残余利益方式は、簡単にいうと、会社が持つ純資産を土台に、通常期待される水準を上回る、または下回る収益力を反映する方法です。

評価額のイメージ
簿価純資産 + 将来の残余利益を現在の価値に換算した金額

「残余利益」とは、利益の全額ではありません。株主が出資した資金に対して通常期待する利益を差し引いた、残りの部分です。

例えば、説明のために、純資産1億円、年間利益1,000万円、期待収益率8%の会社を考えてみます。

純資産
1億円
通常期待される利益
800万円
1年目の残余利益
200万円

計算イメージ:1億円 × 8% = 800万円 → 1,000万円 − 800万円 = 200万円

この例では、期待される利益を200万円上回っています。反対に、年間利益が500万円なら、残余利益はマイナス300万円です。残余利益はマイナスになることもあり、その場合は評価額を引き下げる方向に働きます。

この8%は説明用の仮定です

上記は仕組みを説明する仮定の例です。8%は決定済みの率ではなく、この計算だけで最終的な評価額が出るわけでもありません。

9月16日の第6回会議では、法人税申告書を基礎とする数値の利用、残余利益を加算する期間を5年程度とする案など、具体化に向けた検討が進んでいます。

3.実際に株価は上がるのか、下がるのか

すべての会社で上がるわけではありません。

第6回会議資料では、1,378社を対象にした試算が示されています。例えば、加算期間5年・還元率8%・しんしゃく率0.8という仮定では、次の結果です。

税務上の大会社
+71.7%
税務上の中会社
+12.1%
税務上の小会社
▲21.8%

しんしゃく率とは、この試算で算定額に掛ける調整率です。0.8なら、調整前の金額の80%とします。

「大会社は71.7%上がる」という意味ではありません

これは特定の前提に基づく中央値の比較です。個社ごとの上昇率の平均でもなく、相続税額そのものの増減率でもありません。試算では完全子会社株式の修正などの個別調整も考慮されていません。

自社への影響は、現在使っている評価方式、利益、純資産、今後決まる調整ルールによって異なります。

4.なぜ日本商工会議所や経産省が懸念しているのか

日本商工会議所

納税負担と企業経営への影響を懸念

日本商工会議所は9月18日の意見書で、中小企業の実態や税負担について十分な議論がないまま評価体系全体を見直すことに、強く反対しています。

経済産業省

成長・事業承継を阻害しない慎重な検討を要望

令和9年度税制改正要望では、評価方式の見直しが多くの企業に影響する可能性を踏まえ、企業の成長や事業承継を阻害しないよう慎重に検討することを求めています。

日本商工会議所の懸念の中心は、株式の評価額が上がっても、後継者の手元に納税資金が増えるわけではないことです。非上場株式は簡単に売却できず、会社の資金を納税のために使えば、設備投資などに影響するおそれがあります。

また、利益や資本の蓄積が税負担の増加につながることで成長意欲を損なわないか、正当な役員報酬・退職金や事業上必要なグループ化まで制約しないか、といった問題も指摘しています。

日商の「評価体系全体の見直しへの強い反対」と、経産省の「影響を踏まえた慎重な検討」は、表現の強さが異なります。「経産省が残余利益方式の廃止を決めた」といった理解は正確ではありません。

国税庁側は、個別の租税回避への対応だけでは解決できない構造的な問題があると説明しています。議論の焦点は、評価の公平性をどう確保し、それを事業承継時の負担とどう両立させるかにあります。

5.令和9年度税制改正要望では何が出たか

関連する主な要望を整理すると、次のとおりです。

公表主体 項目 内容の要点
経済産業省 取引相場のない株式の評価方式に関する見直し 成長・事業承継への影響や事業者の懸念を踏まえ、慎重に検討する
経済産業省 事業承継税制の抜本見直し 事業承継を契機に収益力の強化に取り組む中小企業等を後押しする制度へ見直し・強化する
日本商工会議所 令和9年度税制改正に関する意見 評価体系全体の見直しに反対するとともに、事業承継税制の特例措置の恒久化や、同税制を使えない中小企業への評価減制度などを求める
要望・意見と、決定済みの制度は別です

上記はいずれも要望・意見であり、実施が決まった制度ではありません。

ここでは、株式をいくらと評価するかという問題と、相続税・贈与税の負担をどう軽減するかという問題を分けて理解することが大切です。評価方法と事業承継税制は関係しますが、同じ制度ではありません。

6.まだ決まっていないこと

2026年9月後半時点で確認した公表資料では、今回の見直しについて、最終的な方式・算式、適用対象、適用開始日や経過措置は確定していません。

最終的な評価方式・算式
対象となる会社・株主の範囲
還元率や調整率の最終設定
適用開始日・経過措置

第6回資料でも、還元率、純資産価額による上限の要否、配当還元方式の対象範囲などが論点として挙げられています。第6回の議事要旨は、確認時点では作成中でした。

国税庁の骨子には、見直し内容だけでなく評価水準・税負担も、最終的には税制改正プロセスで決定する旨が記載されています。

現時点で断定できないこと

「類似業種比準方式は廃止済み」「新方式が既に適用される」「全社で評価額が上がる」という説明は適切ではありません。

7.今、相続・贈与・株式の移転を考えている会社は

実務上は、改正への不安だけで日程を決めず、次の順序で検討するのがよいと考えます。

まず、現行制度による自社株の評価額と計算根拠を確認する

過去の評価書がある場合も、直近の利益や資産、株主構成の変化が反映されているかを見ます。現在の評価を把握していなければ、見直しの影響も比較できません。

次に、誰に・どの方法で・いつ引き継ぐのかを整理する

相続・贈与・売買では検討事項が異なります。相続税・贈与税の評価額を、そのまま売買価格として使えると決めつけず、取引当事者や目的に応じて確認する必要があります。

税負担・納税資金・経営権を一緒に検討する

「改正前に急いで贈与すれば必ず得」とは限りません。今の贈与に伴う税負担、後継者の準備、株式移転後の経営体制も含めて判断します。

今から整理しやすい資料:株主名簿、過去数年の決算書・法人税申告書、既存の株価評価書などです。自社の現状を把握しておけば、具体的な改正内容が公表されたときに、承継計画への影響を検討しやすくなります。

自社株への影響を確認したい方へ

榊公認会計士・税理士事務所では、非上場株式の評価、相続・贈与、株式移転に関するご相談をお受けしています。

今回の見直しはまだ検討段階です。現時点では、改正を前提に結論を急ぐのではなく、まず現行制度での自社株評価と株主構成を確認し、今後の選択肢を整理することが重要です。

参照資料

2026年9月後半確認。本文は以下の一次資料に基づき、検討案・要望と現行制度を区別して作成しています。

  1. 国税庁:審議会・研究会等(会議資料・議事要旨の一覧)
  2. 国税庁:第6回有識者会議資料(2026年9月16日)
  3. 国税庁:No.4638 取引相場のない株式の評価
  4. 国税庁:第1回有識者会議資料(2026年4月20日)
  5. 国税庁:第5回当日机上配付資料「取引相場のない株式の評価の見直し(骨子)」
  6. 経済産業省:令和9年度税制改正要望「取引相場のない株式の評価方式に関する見直し」
  7. 日本商工会議所:令和9年度税制改正に関する意見 本文(2026年9月18日)
  8. 国税庁:第5回有識者会議資料(2026年8月20日)
  9. 国税庁:第5回有識者会議議事要旨
  10. 経済産業省:令和9年度税制改正要望「事業承継税制の抜本見直し」
  11. 日本商工会議所:令和9年度税制改正に関する意見の公表(2026年9月18日)

※本記事は2026年9月後半時点で公表されている資料を基に、一般的な内容を解説したものです。制度見直しは検討中であり、今後の税制改正や国税庁の公表内容によって変更される可能性があります。個別の税務上の取扱いは、会社の状況、株主構成、取引内容等によって異なります。

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