非上場株式の「株価」は1つではない|相続・贈与・売買・M&Aで考え方が違う理由
非上場株式の「株価」は1つではない|相続・贈与・売買・M&Aで考え方が違う理由
「会社の株を子どもに渡したいのですが、1株いくらでしょうか?」
「共同経営者に自社株を売りたいのですが、設立したときと同じ金額で大丈夫でしょうか?」
非上場会社の株式について、このようなご相談を受けることがあります。
実は、非上場株式には「この会社の株は必ず1株○円」という、誰にとっても共通する1つの株価があるわけではありません。
同じ会社の株式でも、
- 相続や贈与をする
- 株主間で売買する
- 会社や役員との間で売買する
- M&Aで第三者に会社を売却する
といった目的や取引の相手によって、考えるべき価格が異なることがあります。
一口に「株価」といっても、相続・贈与のための税務上の評価額と、実際に株式を売買するときの取引価格は同じものではありません。
そのため、「自社株はいくらか」を考えるときには、まず「何のための株価なのか」を整理することが重要です。
非上場株式には、上場株式のような共通の市場価格がありません。相続・贈与、株式売買、M&Aでは、それぞれ評価の目的や確認すべき事項が異なります。株価を計算する前に、「誰から誰へ、何のために株式を動かすのか」を整理することが重要です。
1.非上場株式には、上場株式のような市場価格がない
上場株式であれば、証券取引所で売買されているため、その時点の株価を確認することができます。
一方、非上場株式には通常、そのような市場価格がありません。
たとえば、会社を設立したときに1株5万円で株式を発行していたとしても、現在も1株5万円とは限りません。
設立後に会社が利益を積み上げていれば純資産が増えていることがありますし、保有している土地などの価値が上昇している場合もあります。
反対に、会社の業績や財政状態が悪化していることもあります。
「設立時に1株5万円だったから、今も5万円」
と単純に考えることはできません。
会社を設立したときの払込金額と、現在の株式の価値は別に考える必要があります。
2.相続・贈与では、相続税・贈与税のための株価を評価する
非上場株式を相続したり、贈与を受けたりする場合には、相続税・贈与税を計算するための株価を評価します。
代表的な評価方法には、
- 類似業種比準方式
- 純資産価額方式
- 両者を併用する方式
- 配当還元方式
などがあります。
ここで重要なのは、すべての株主が同じ方法で評価するとは限らないという点です。
どの評価方法を使うかは、「誰がその株式を取得するのか」という株主区分のほか、会社の規模や資産構成、営業状況などによって変わります。
たとえば、会社の経営を支配する立場にある同族株主等が株式を取得する場合には、原則として類似業種比準方式や純資産価額方式などによって評価します。
一方、会社の経営支配に及ぼす影響が小さい一定の株主については、配当還元方式によって評価する場合があります。
そのため、「持株割合が50%未満だから配当還元方式になる」といった単純な判定はできません。
本人の持株割合だけを見るのではなく、他の株主との関係や議決権割合なども含めて確認する必要があります。
3.同じ会社でも、目的が違えば「株価」の考え方も変わる
たとえば、創業者Aさんが株式の100%を持っている会社があるとします。
Aさんが、次の3つの取引を検討しているとします。
子どもに株式を贈与
相続税・贈与税のルールに基づく評価が必要になります。
共同経営者に一部を売却
取引当事者や関係性も踏まえ、売買価格と税務上の時価を検討します。
M&Aで第三者に売却
収益力・資産負債・成長性などを踏まえ、交渉により価格が決まります。
対象となる会社はすべて同じです。
それでも、それぞれで同じ株価をそのまま使えるとは限りません。
① 子どもに株式を贈与する場合
子どもへの贈与であれば、贈与税を計算するために、相続税・贈与税のルールに基づいて株式を評価する必要があります。
会社の規模や株主構成などを確認し、類似業種比準方式や純資産価額方式など、適用する評価方法を判定します。
② 共同経営者に株式を売却する場合
共同経営者への売却であれば、実際にいくらで売買するのかを決める必要があります。
ただし、当事者が自由に決めた金額であれば、税務上も必ずその金額が認められるとは限りません。
誰から誰へ売却するのか、売主・買主が個人なのか法人なのか、両者にどのような関係があるのかなどによって、税務上検討すべき「時価」や課税関係が異なることがあります。
特に、親族間や自分が経営する会社との間などで、通常考えられる価額よりも著しく低い金額で株式を移転する場合には注意が必要です。
③ M&Aで第三者に会社を売却する場合
M&Aの場合には、相続税・贈与税のための評価額をそのまま売買価格とするわけではありません。
現在の利益だけでなく、
- 将来どの程度の利益やキャッシュ・フローを生み出せるか
- 会社がどのような資産や負債を持っているか
- 事業にどの程度の成長性があるか
- 競争力のある技術や顧客基盤を持っているか
など、さまざまな要素が会社の価値に影響します。
こうした要素を踏まえて会社や株式の価値を検討し、最終的な売買価格は買主と売主との交渉によって決まります。
「会社の株価を一度計算すれば、その金額をどんな取引にも使える」
というわけではありません。
4.よくある3つの誤解
非上場株式について、特に注意したいのが次のような考え方です。
会社の状況は設立後も変化します。
利益が積み上がって純資産が増えていることもあれば、保有する資産の価値が変化していることもあります。
そのため、過去の払込金額が現在の株式の価値を示しているとは限りません。
相続税・贈与税の評価では、本人の持株割合だけで評価方法を判定するわけではありません。
他の株主との関係や議決権割合なども確認し、同族株主等に該当するかどうかなどを判定する必要があります。
「50%未満だから配当還元方式」と単純に考えるのは注意が必要です。
相続税評価額が税務上の重要な基準になる場合はあります。
しかし、相続・贈与のために計算する評価額と、実際の株式売買で検討すべき価格が常に同じになるわけではありません。
売主・買主が個人なのか法人なのか、両者にどのような関係があるのかなどによって、税務上の時価の考え方や課税関係が変わることがあります。
そのため、「相続税評価額を計算して、その金額で売買すれば必ず問題ない」というわけではありません。
特に、親族間や自分が経営する会社との間で株式を売買する場合には、取引を行う前に税務上の取扱いを確認しておくことが重要です。
5.自社株を動かす前に確認したいこと
非上場株式については、「株価はいくらか」を計算する前に、次の点を整理しておくことが重要です。
- 現在、誰が株式を持っているか
- 誰に株式を移したいのか
- 何株を移したいのか
- 売却するのか、贈与するのか
- 株式を移した後の経営権をどうしたいのか
たとえば、
- 親から子へ自社株を渡したい
- 共同経営者に株式を持ってもらいたい
- 役員や従業員に株式を持たせたい
- 退任する株主から株式を買い取りたい
- 第三者への会社売却を考えている
- 将来のIPOに向けて株主構成を整理したい
といったケースでは、それぞれ検討すべき内容が異なります。
同じ「株式を移す」という取引でも、誰から誰へ、どのような方法で移すのかによって、必要となる評価や税務上の検討が変わります。
「まず株価を計算してから考える」のではなく、
「どのような株式移転をしたいのかを整理してから、必要な株価を検討する」
という順番で考えることがポイントです。
まとめ
非上場株式には、上場株式のように誰にとっても共通する市場価格があるわけではありません。
同じ会社の株式でも、
- 相続・贈与
- 株主間の売買
- 会社や役員との株式売買
- M&Aによる会社売却
など、目的や取引の相手によって、株価の考え方が異なることがあります。
特に、「昔1株5万円だったから今も5万円」「50%未満なら配当還元方式」「相続税評価額で売れば問題ない」と単純に判断するのは注意が必要です。
非上場株式を実際に移転する前に、「誰から誰へ」「何の目的で」「どのような方法で」株式を移すのかを整理したうえで、目的に合った株価を検討することが重要です。
非上場株式の評価・株式移転のご相談
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という段階でもご相談いただけます。
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※本記事は2026年9月時点の法令・通達等に基づき、一般的な内容を解説したものです。実際の税務上の取扱いは、会社の状況、株主構成、取引当事者、取引条件等によって異なります。

