食料品の消費税が1%になったら、事業者は何に注意すべき?
公認会計士・税理士が解説
食料品の消費税が1%になったら、
事業者は何に注意すべき?
税率が下がっても、消費税の処理がなくなるわけではありません。一般課税と簡易課税の違い、届出期限、資金繰り、レジ・会計ソフトの対応を分かりやすく解説します。
特に重要なのは、①1%でも区分経理と申告は必要、②一般課税と簡易課税で結果が変わる、③簡易課税の変更には期限がある、④還付見込みでも資金繰りに注意する、という4点です。税率が下がるからといって、納税額が単純に8分の1になるとは限りません。
本記事は、飲食料品の消費税率を2027年4月から2年間、1%に引き下げるとの政府方針を前提にしています。対象品目、開始時期、経過措置などは今後変更される可能性があります。
011%になっても「非課税」ではない
食料品の税率が1%になっても、消費税がかからなくなるわけではありません。あくまで1%の消費税がかかる課税取引です。
そのため、課税事業者には引き続き次の対応が必要です。
- 売上げを税率ごとに分けて記帳する
- 消費税の申告を行う
- インボイス発行事業者は、必要に応じてインボイスを交付する
- 一般課税で仕入税額控除を受ける場合は、原則として帳簿とインボイスを保存する
「1%だから消費税の処理は不要」にはなりません
酒類、店内飲食、日用品なども扱う事業者は、1%と10%など複数の税率を正しく分ける必要があります。
02一般課税では、還付になる可能性もある
一般課税では、基本的に「売上げで受け取った消費税」から「仕入れや経費で支払った消費税」を差し引いて納付税額を計算します。
売上側
食料品の売上げにかかる消費税が1%に下がると、受け取る消費税は少なくなります。
経費側
店舗家賃、広告費、販売手数料、システム利用料、設備購入などには、引き続き10%がかかる可能性があります。
食料品の売上げが多く、10%の経費や設備投資も多い事業者では、売上げで受け取る消費税より、支払った消費税の方が多くなることがあります。その場合、他の要件を満たせば消費税が還付される可能性があります。
店舗改装や大きな設備投資を予定している場合は要注意
簡易課税を選択したままだと、一般課税なら受けられた還付を受けられない可能性があります。投資前に比較試算しておくことが重要です。
03簡易課税では、実際の仕入税額を使わない
簡易課税では、実際に支払った消費税を一つずつ集計して納付税額を計算するのではなく、売上税額に業種ごとのみなし仕入率を使います。
| 項目 | 一般課税 | 簡易課税 |
|---|---|---|
| 計算の基本 | 実際の売上税額から、実際の仕入税額を差し引く | 売上税額と、業種別のみなし仕入率で計算する |
| 設備投資の影響 | 支払った消費税が控除に反映される | 実際の支払額は計算に直接反映されない |
| 還付 | 条件を満たせば還付になることがある | 通常、計算上の還付は生じない |
例えば食料品の小売業では、一般にみなし仕入率80%が使われます。売上税額が10万円なら、単純計算では、みなし仕入税額8万円を差し引いた2万円が納付額となります。
実際には10万円を超える消費税を家賃や設備代で支払っていても、その金額は簡易課税の計算には直接反映されません。一方、実際の仕入税額が少ない事業者では、簡易課税の方が有利になることもあります。
どちらが有利かは、事業者ごとに異なります
税率変更後の見込み売上げ、仕入れ、経費、設備投資を使い、一般課税と簡易課税を比較する必要があります。
04簡易課税の変更は、届出期限に注意
簡易課税を新たに選択する場合や、簡易課税をやめて一般課税へ戻す場合には、税務署への届出が必要です。
原則として、適用を変更したい課税期間が始まる前までに手続をしなければなりません。また、一度簡易課税を選択すると、原則として2年間は継続しなければならず、すぐに一般課税へ戻せない場合があります。
- 現在は一般課税か、簡易課税か
- 過去に簡易課税の届出を提出しているか
- 簡易課税をやめられる時期はいつか
- 次期に店舗改装や設備購入の予定があるか
- 両方の方法で納付額がいくらになるか
昔の届出が現在も有効なことがあります
課税売上高が5,000万円を超えた期間や、しばらく簡易課税を使わなかった期間があっても、過去の届出が自動的に失効するとは限りません。提出履歴を確認しましょう。
なお、インボイス登録をきっかけに課税事業者になった場合など、届出期限に特例があるケースもあります。実際の期限は個別に確認が必要です。
05納税額が減っても、資金繰りに注意
食料品の税率が下がり、税込販売価格も下げる場合、消費者から受け取る金額は少なくなります。一方、店舗家賃、人件費、借入金の返済などが変わらなければ、手元資金が一時的に減ることがあります。
また、消費税の中間納付額は、原則として前の課税期間の納税額を基準に計算されます。当期の納税見込み額が減っていても、前年の税額を基にした中間納付が発生する可能性があります。
値下げ後の入金額で、固定費や返済を賄えるか確認します。
前年実績を基にした納付が一時的な負担にならないか確認します。
還付見込みでも、原則として確定申告後の入金となります。
レジや会計ソフトの改修費用と、税率を戻す際の再対応も見込みます。
仮決算による中間申告という方法もあります
一定の場合には、当期の実績に基づいて中間納付額を計算できます。ただし、仮決算でマイナスになっても、中間申告の段階では還付を受けられません。
06レジだけでなく、会計・請求・返品も確認
税率変更への対応は、レジの税率を変えるだけでは終わりません。売上げから申告までの流れ全体を確認する必要があります。
- POSレジ、ECサイト、商品マスター
- 会計ソフト、販売管理システム
- 請求書・見積書の発行システム
- 価格表、店頭表示、契約書
- 返品・値引き・キャンセルの処理
税率変更前に販売した商品が、変更後に返品される場合もあります。販売日と当時の税率を確認できるよう、過去の取引データを残しておくことが重要です。
07事業者が今から確認すること
- 計算方法を確認現在が一般課税か簡易課税かを確認します。
- 届出を確認過去の届出書と変更可能な時期を確認します。
- 税額を試算売上げ、経費、設備投資を使って比較します。
- 実務対応を整理資金繰りとシステム対応の予定を立てます。
制度の細部が決まる前でも、現在の計算方法と届出状況は確認できます。法案成立後に慌てないためにも、まずは自社の状況を整理しておきましょう。
まとめ
- 1%になっても、消費税の申告や税率ごとの区分経理は必要
- 一般課税では、10%経費や設備投資により還付となる可能性がある
- 簡易課税では、実際に支払った消費税は納付額に直接反映されない
- 一般課税と簡易課税のどちらが有利かは、事業者ごとに異なる
- 簡易課税の変更には、届出期限と継続期間の制限がある
- 中間納付、還付時期、システム費用を資金繰りに反映する
食料品の税率が下がっても、すべての事業者の負担が同じように減るわけではありません。特に、食料品の売上げが多い事業者や設備投資を予定している事業者は、早めに一般課税と簡易課税を比較しましょう。
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※本記事は2026年8月2日時点で公表されている政府方針と現行の消費税制度に基づく一般的な情報です。食料品1%に関する法律はまだ成立していないため、対象商品、実施時期、経過措置、届出期限などは今後変更される可能性があります。具体的な対応は、成立後の法令・国税庁公表資料等をご確認ください。

